部分貸倒れの損金算入について

Q 弊社はP株式会社(以下「P社」)に売掛金3000万円、貸付金150万円、計3150万円の債権を有しています。P社の経営状態はここ数年思わしくなく近々廃業する予定だそうです。それを聞いて、最近、会社法442条によりP社の直近の計算書類を閲覧したところ、実に2億円の債務超過(資産総額1千万円、債務総額2億円)であることが判明しました。
 仮に、この計算書類の数字が正しいものだとすると、債権回収可能な金額はどれだけがんばっても1千万円以下ということになりそうですが、この段階で3150万円-1千万円=2150万円を損金経理すれば、貸倒損失として損金算入できるでしょうか?

A 法人税基本通達9-6-2 により、この段階で貸倒損失として損金算入される金額はありません。損金経理した2150万円は貸倒引当金繰入額として所得計算を行います。ただし、売掛金について、法人税基本通達9-6-3に該当する場合には貸倒損失として損金算入される余地はあります。

【解説】
 現行の課税実務において、金銭債権については部分貸倒が認められないというのが一般的な見解です。
 なぜ、金銭債権の「全額」が回収不能でなければ貸倒損失として認められないのか、それは債権は所有権などの権利とその性格が異なるからなのかもしれません。

■債権の特徴
1.対人性
 自然人、法人に金銭的価値を請求する権利
2.時効消滅する
 「消滅」するためには債務者の「援用」が必要

あと、これも勘違いしやすい点なのですが、会計上・税務上貸倒損失処理することと、私法上債権が消滅することとは別々の話である、ということです(もちろん、債券放棄のように消滅した債権について貸倒損失を認識するケースも十分あり得ますが)。
たとえば、法人破産の場合は、破産手続きが終結したからといって直ちに債権がこの世の中からなくなるわけではなく、あるかないかといえばいまだ「ある」状態です。ただ、債権者から積極的に「かえしてね」とは言えないだけです。

■(回収不能の金銭債権の貸倒れ)
 法人税基本通達9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」により改正)
(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

 ただし、売掛債権については下記の通達があります。

■(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)

法人税基本通達9-6-3 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下9-6-3において同じ。)について法人が当該売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をしたときは、これを認める。(昭46年直審(法)20「6」、昭55年直法2-15「十五」により改正)

(1) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)
(2) 法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき
(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はない。

 ですので、設例中の売掛金が、法人税基本通達9-6-3に該当する場合には、売掛金については貸倒損失として損金算入される余地はあります。

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